うんこは漏らしても個人情報は漏らすな

つれづれなるままにクソ記事を書きつつ

逃避行

最近、成績が落ちた。

夜中まで行われるゲームプレイ、好きな配信者の動画漁り、勉強中にふと読みたくなってしまう漫画の数々━━━

原因と考えられるものはいくつもあるが、偏に僕の努力不足が招いたものである。

元々『普通』と呼ばれるような、高校二年の僕の成績が右肩下がりの一途を辿っているということが何を意味しているのかは、想像に難くないだろう。

今日も進路面談で先生が今後の僕の展望について熱く語り、ついつい目頭が熱くなってしまったのだが、今日から頑張るぞとリフレッシュがてらに購入した麦茶を一気飲みしたら、そんな気持ちもクールダウンしてしまった。

「なんか、つまんないな」

胸に去来した感情を吐き出してみるが、そんなことで気分が晴れることもない。

もうすぐ夏休みだというのに、もやもやとした不安が僕の頭を押さえつけてくるのだった。

スマホを取り出し、現在の時刻を確認する。

予備校が始まるまでだいぶ時間があるが、僕は『先に自習室で予習復習をしておこう!』などという勤勉な学生ではない。

何か暇を潰せるものは━━━

「おっ」

ちょうどスマホに、お気に入りの配信者が生放送を開始したことが通知される。

最近は国民的な某RPGにお熱のようで、何度も挑戦しては玉砕している姿に勇気と爆笑を貰っている。

もしかしたら今日成し遂げるかもしれない彼の偉業をこの目に焼き付けるべく、僕は安寧の地を求め、徘徊を開始した。






旧校舎の二年三組。

そこが僕のいつもの根城であり、もはや第二の家と呼んでもよかった。

理由としては、ここが僕の所属するクラスであること、校舎の構造的にこの時間帯は日が差さないこと、そして皆一身上の都合により、教室に残る者がほぼいなくなることが挙げられる。

もうひとつ重要な理由があるのだが、これは僕の精神的な問題であるので伏せさせて頂く。

男子高校生は繊細なのである。

フラッシュバックしそうになった嫌な思い出を振り切るように、勢いよく教室の扉を引いた。



━━━残念ながら、僕の安寧の地は先客がいたようだ。



女の子が気持ちよさそうに眠っている。

両手を枕代わりにしているため、顔こそ見えないが、上履きの色を見るに同学年のようだ。

少し明るい茶髪のセミロングは、僕のクラスにはいなかった気がするので恐らく別のクラスの女子だろう。

昼寝のためにこの教室を選んだ彼女の慧眼には敬意を表するが、問題なのは昼寝をしている場所である。

そこは僕の席なのだ。

「あの寝方、よだれ出やすいんだよなぁ…」

僕とて一端の高校生なので、そういったエロスなことには人並みに敏感である。

後日僕があそこで授業を受ける際、悶々としてさらに勉強が疎かになること請け合いだろう。

彼女には悪いが、ここは叩き起こさせて━━━

「失礼しました」

退散することにした。

残念ながら、僕には初対面の女子にそんなことができる度胸など持っていなかった。

仕方がない、気は進まないが今日のところは隣の教室で━━━

「あ、ここのクラスの人?」

「ぅえっ」

背後からの声に驚いて、情けない悲鳴が出てしまった。

振り返ると、さっきまで寝ていたはずの女子が腹を抱えて笑っている。

「田んぼで捕まえたカエルをそのままコンクリに叩きつけたみたいな声出してたね」

随分と独特な感性をお持ちのようだった。

「寝てる振りをしてたなら少し悪趣味だと思うな」

率直に不満を述べながら、彼女を一瞥する。

先ほどまで寝ていたため少し跳ねているが、切り揃えられたセミロング。

教師に怒られない程度の軽いメイク。

スカートが少しばかり短いぐらいで、至って普通のJKである。

正直なところ、結構可愛かった。

「ごめんごめん。で、キミ忘れ物取りに来たんでしょ?」

私に構わず持って行ってくれたまえー、と両手を広げてジェスチャーをしているが、あいにく僕の目的とは全く違っている。

それに━━━

「そこ、僕の席なんだけど」

「あ、まじ?」

彼女の視線が僕の机に移るのと同時に、顔と耳が真っ赤になっていくのを確認した。

よく見ると、僕の机に少しばかり水溜りが作り上げられている。

彼女はポケットからハンカチを取り出すと、必死に机を拭き始めた。

「…あのさ、ウエットティッシュとかリセッシュとかそんな類のもの持ってない?」

申し訳なさそうに僕を見つめる目は、少し涙が浮かんでいた。

「いいよ、気にしないから」

僕は心の中で神様に最大限の感謝の言葉を送りながら、彼女のことを許したのだった。






「そもそも僕は忘れ物を取りに来たわけじゃないよ」

彼女が落ち着いたようなので事情を説明しておく。

「予備校までこの教室でだらだらしときたかったんだ」

「へえ、頭いいんだ」

「この前のテスト持ってるけど見る?」

バッグからしわくちゃになったテスト用紙を彼女に手渡す。

今回は赤点が英語しかなかったので進歩だと思う。

「…なんか、ごめんね」

「そういうときは思いっきり笑い飛ばしてくれるほうが辛くないかな」

非常に心が痛かった。

「ちなみに君は何点だったのさ」

僕だけ辱めを受けているのは公平ではないので、彼女の点数を聞いてみる。

今回のテストは全体的に結構難しかったと学年中がざわついていたので、彼女とて例外ではないだろう。

「はいこれ。結構やりごたえあったよね」

彼女の答案用紙は、全て八割を超えていた。

「ふぅん、なかなかやるね」

「声震えてるよ」

僕の虚勢はすぐにバレてしまったらしい。

「こんな点数、人生で一回くらいは取ってみたいよ」

恐らく僕のような生半可な勉強法とモチベーションでは到底辿り着けないような境地である。

「でも私のクラスじゃこれでも普通くらいだよ」

さらっと恐ろしいことを僕に伝えてきた。

さながら、ラディッツを撃破した直後にベジータとナッパの存在を知ったピッコロさんの気持ちである。

「君、何組?」

「十組」

特進じゃないか。

十クラスの内の、特に勉強ができる秀才達が集う場所。

それが十組、通称『特進』。

五年ほど前に新校舎と共に創設され、難関国立大学に合格するため日夜勉強に励んでいるらしい。

普段旧校舎で過ごしている僕からすると、あまり馴染みの無い人達である。

そんなエリートが、これまたどうしてわざわざ旧校舎の空き教室で惰眠を貪っていたのだろうか。

そんな疑問が僕の頭の中に浮かんでいた。

「なんか、あの教室にいるのが息苦しくなっちゃって」

ぽつりと彼女が呟く。

「テスト期間になると皆、殺気立ってるっていうか」

なんとなく彼女のクラスの雰囲気が理解できた。

それだけ勉強に懸ける思いが強い人が多いのだろう。

僕のような、赤点ラインを如何に回避するかに心血を注いでいる人間と比べると、とても健全だと思うのだが、隣の芝生は青いというやつだろうか。

「私だって、休みの日に模試しに行くんじゃなくて、友達とUSJとか行きたいもん」

バックドロップとか面白いもんな。








「なんか、つまんないな」

いつぞや僕が呟いた言葉を、彼女も口にする。

初めて会ってまだ一時間も経っていないというのに、なんだか彼女に親近感を覚える。

「僕もそう思うよ」

いつだったか、悩みがある人の話を聞くときは共感してあげることが大事だと何かの記事で読んだことがあるが、そんな下心は一切なく彼女に共感していた。

「でもキミって三組の人でしょ?これから大会とか━━━」

「言ったじゃないか、今日は予備校の日だって」

彼女が言い終える前に食い気味に喋ってしまった。

僕が思っている以上に、心の傷というものは深いのかもしれない。

あと、人に嘘を付くのはあまり気持ちのいいものじゃないな。

心の中で反省しながら、彼女に作り笑いを見せておく。

「あ、そういえばそんなこと言ってたね」

彼女も納得してくれたらしい。

「私もこれからピアノのレッスンなんだけどね」

「多才だね」

どうやら賢い人というのは、一味も二味も違うらしい。

感心していると、不意に彼女が妖しく笑う。

「サボっちゃおうかなと思って」

幼い子供に話しかけるように、ゆっくりと語りかけてくる。

「キミもどう?」

なんだか僕は、誰かにそれを言ってほしかったような気がする。





「逃げちゃおうよ、一緒に」





彼女は、僕に手を差し伸べてそう言った。








何が何やら分からぬまま、僕は彼女と電車に乗り込んでいた。

スマホで時間を確認すると、予備校の開始時間はもうとっくに過ぎていた。

後で親や講師にどんな言い訳をしようかと頭を抱えながら、僕をこの逃避行に誘った当の本人を見やると、楽しそうに窓の外を眺めている。

「それで、これからどこに行くつもり?」

「知らない」

にっこりと答えてくれたが、僕にとってはさらに不安を煽るだけだった。

「なんで僕を誘ったのさ」

なんとか不安を紛らわせようとひとつ問いかけてみる。

「なんか似たもの同士だなって思ったから」

「それは、光栄だね」

少し気恥ずかしくなってしまったのを悟られないように窓のほうに顔を向ける。

外を見ると、見慣れない風景が広がっていた。

そういえば、最近は遠出をしていなかったように思う。

そんなことを思い耽っていると、向かいに座っている彼女が目を輝かせながら言い寄ってきた。

「ね、これから何しよっか」

作戦会議しようよ作戦会議と一人ではしゃいでいる。

「ひとまず、ご飯でも食べようか」

適当に大きい駅で降りれば、それなりに安くて美味しいものが食べられるだろう。

「私、マックがいいな」

「これまた随分お手軽だね」

女子は食にこだわるイメージがあったのだが。

「あんまり食べたこと無いんだよね」

私の家結構厳しいし、と付け加える。

彼女の見た目からは少し想像できないが、わりとお嬢様育ちらしい。

そういえば、ピアノがどうこう言ってた気がする。

しかし僕にとって彼女がお嬢様かもしれないとか、そんな些細なことはどうでもよかった。

「ちなみに略称はマックじゃなくてマクドね」

マクド派の知能は猿並みって研究データが出てるらしいよ」

結局、駅に着いても作戦会議がまとまることは無かった。







「そろそろさ、キミのこと教えてよ」

彼女がフライドポテトで僕を指しながら、そんなことを聞いてきた。

「教えろって言われても、君と同じ高校に通う男子高校生としか言えないんだけど」

特別頭がいいわけでも、どこかのお坊ちゃまでもない。

日々の勉強についていくのが精一杯の、普通の高校生。

それが僕という人間である。

「部活は?何やってるの?」

痛いところを突かれてしまった。

嘘を付くのなら帰宅部だよ、と言ってしまえばいいのだが、そのカードを僕が切ることはできなかった。

「一組から三組はスポーツ推薦組だもんね。今からサインとか貰っとこっかな」

これである。

教室での会話で、彼女に三組の人間だと正直に言っていたため、誤魔化すことは不可能といえる。

観念して、白状することにした。

「サッカー部」

「あ、言われてみればそれっぽい」

丸坊主だったら野球部と思われていたのだろうか。

もう隠し続けるのも疲れたので、最後に三文字付け加える。

「だった」

彼女は目を丸くした。

「前の試合でちょっと張り切りすぎてね」

じくじくと右膝が痛み始めたので、丁寧に摩ってやる。

「全治一年だって言われたよ」

僕は現在二年生で、季節は夏。

これから大学受験だってやってくる。

それはつまり━━━

「僕の高校サッカーは、もうおしまい」

彼女に向けて、にこりと笑ってやる。

今の僕は、ちゃんと笑えているだろうか。








正直いって、そこまでサッカーが好きなわけでもなかった。

幼稚園の頃に、親に連れられて近所のクラブチームに体験しにいったのが始まりだったか。

当時から僕はインドア派であったので、そんなものをやるくらいならゲームで遊んだり、漫画を読んでいたかった。

今になって思い返してみれば、内向的な僕が今日まで人間関係に悩むことがなかったのは、サッカーを通した集団行動の賜物であるといえるので、僕を引きずって連れて行った親には感謝している。

中学に上がる頃になっても僕の根本的な人間性は変わることはなかったが、ひとつ気付いたことがあった。

僕は、人よりそれなりに速かった。

トップスピードでサイドを駆け上がり、全てを振り払ってボールを受ける。

その一点において、僕はサッカーが楽しいと思えた。

僕とマッチアップした相手が絶望した。

チームメイトは僕を見て奮起した。

観客は沸いていた。

あの感覚を味わうためにサッカーと向き合っていたといっても過言ではない。

今の高校にセレクションしに行ってこいと当時の監督に伝えられたときはあまり乗り気ではなかったが、後日訪問した際に女子のレベルが高かったため、かなり頑張った記憶がある。

それなりにレベルの高い高校で、それなりに活躍して、普通に大学に進学する。

それがなんとなく描いたビジョンだった。

サッカーに対して真摯な姿勢を全く見せなかったわけではないが、そんな煮え切らない僕にサッカーの神様が罰を与えたのだろう。

決勝トーナメント進出を懸けた予選最終戦

もう少しで届くボールに向けて、思い切り駆けた僕の右脚は。

まるで自分のものではないように、地に墜ちた。

右膝前十字靱帯断裂。

それが僕に課された罰だった。









「あれは痛かったなぁ」

あの時を振り返りながら、僕たちは近くの公園へと歩を進めていた。

「監督からはマネージャーとして頑張ってくれないかって言ってくれたんだけどね」

練習に励んでいる彼らを見ると、もうあの時のようには走れないのだと思い知らされるようで。

「考えさせてくれって、とりあえず休部扱いにしてもらったけど、もう戻ることはなさそうかな」

あれ以来、なるべくサッカーに関わらないように生活してきた。

「なんで僕が三組の教室にこだわってたか分かる?」

ヒントは昼寝にちょうどいいよね、と皮肉も付け加えておいた。

「ちょい待ち」

そういうと彼女はおもむろにスマホを取り出し、なにやら検索している。

少し行儀が悪いが、後ろから覗くと高校の配置図を眺めていた。

「あ、分かった」

彼女の声が1オクターブ上がる。

「グラウンドから一番遠いからでしょ」

「君探偵とか刑事目指してみない?」

「じゃあキミはワトソンくんね」

それも悪くないな、と一瞬思ってしまった。











「まぁこんな風に、不完全燃焼気味なんだよ」

公園のベンチに座りながら空を見上げると、すっかり暗くなっていた。

「大学でサッカーやらないの?」

「どうだろうね」

この怪我が完治したとして、またあの時みたいに走れるかは微妙なところで、そんなモチベーションでキツい練習など乗り切れるはずもないと思う。

「また怪我する前に戻れたら、今度はもう少し上手くやるんだけどなぁ」

試合前に神様にお祈りを捧げておけば、機嫌を良くして怪我しないようにしてくれるんじゃないだろうか。

「まだやりたかった?」

彼女が僕を覗き込んでくる。

「そりゃ、もちろん」

なんだか声が震えている。

現在の僕を彼女に話す形で振り返って、改めてみじめに思えてしまったからだろうか。

そう認識してからは早かった。

涙と嗚咽がとめどなく溢れてくる。

女の子の前でみっともない姿を見せているな、と思いながらも背中を摩ってくれる彼女の手が、酷く心地よかった。









「ちょっとは落ち着いた?」

「おかげさまで」

久しぶりに泣いたら憑き物が落ちたようだ。

「これからどうする?」

時計を見ると、もう22時に差し掛かろうとしていた。

親には『予備校の後、友達の家で勉強会をしている』とハンバーガーを食べていた折に連絡しておいたが、帰ることのできる時間なのならば帰っておくのが得策である。

そんな意を込めて彼女に今後の動向を聞いてみた。

「泊まる場所見つけないとね」

まだ逃避行を続ける気は満々のようだった。

「野宿とか勘弁して欲しいな」

せめてもの抵抗で思考している彼女にノイズを与えてみる。

「ここの近くだと━━━」

残念ながら、彼女の耳には届いていないようだった。

「始発まで時間潰せればいいから、こことか安くていいね」

彼女がスマホで僕に見せてきたのは、芳香剤と煙草の匂いが立ち込めていそうな休憩所だった。











あれよあれよという間に彼女が手続きを終え、僕はホテルの一室の妙に大きなベッドに腰かけていた。

今日たまたま教室で会っただけの女子に誘われて逃避行をした挙句、こんな場所で夜を明かそうとしている。

僕はこの状況を前にして混乱していた。

「キミも早くお風呂入ってきなよ」

もこもこしたタオル生地のパジャマ、いわゆるバスローブを着た彼女が僕に呼びかけてきた。

虹色に光ってて面白いよ、と楽しげである。

とりあえず、シャワーを浴びて思考をリセットしようと素直に風呂で温まることにしたが、浴室が彼女のいい匂いで充満していてそれどころではなかった。

「たまにさ、脱線してみたくなるんだよね」

備え付けのTVを観ながら彼女はぽつりとこぼした。

「敷かれたレールの上を真っすぐに進むのも嫌いじゃないけど、たまに面白そうなものが転がってると立ち止まって取りにいきたいわけ」

「欲張りだね」

「そう、なんでもね」

そういって僕を見つめる彼女の目は、あの時と同じように妖しい色を湛えていた。

これは、まずいかもしれない。

僕の頭の中で、蜘蛛の巣に引っかかった蝶がじたばたと暴れていた。

「僕あんまり激しい運動できないんだよね」

相手の良心に呼びかけてみた。

「私が上になってあげるよ」

そういうことを言いたかったのではない。

彼女が僕にしなだれかかってきた。

浴室で嗅いだ匂いよりもさらに濃い匂いがして、頭がくらくらする。

「君さ、こういうこと初めてじゃないの?」

「キミはどっちだったら嬉しい?」

少し考えて、答える。

「…初めてだったら嬉しいなぁ」

彼女が僕の耳元で小さく囁いてくる。

「内緒」

それはもう答えじゃないかなぁと思った瞬間、僕の身体はベッドに沈んでいった。











始発の時間が迫ってきたため、速やかにチェックアウトを済ませた僕たちは、駅のホームで電車を待っていた。

夏であっても、早朝は少し肌寒い。

「どうだった?」

何がだろうか。

「昨日一日楽しかったかなって」

「誰かのおかげで一生忘れられそうにないね」

せめてものお返しとして皮肉を飛ばしておく。

「あは、光栄だね」

彼女はくつくつと笑っている。

「今度はさ、USJ行こうよ」

早くも次の計画を立てていた。

USJか。

どうせなら、もう少し足を伸ばしてみたい。

夏休みだし、こんなところはどうだろう。

「僕は東京のほうにいってみたいかな」

遠くから、電車の音が聞こえてくる。

ふと胸に浮かんできた気持ちを口に出してみた。

「なんか、楽しくなってきたな」

夏休みが、待ち遠しかった。